【楽曲解説】トスティ作曲「最後の歌」L'ultima canzone

作曲家

フランチェスコ・パオロ・トスティ

Francesco Paolo Tosti(1846–1916)

イタリアの作曲家・声楽教師。とりわけ歌曲の分野で知られ、声の美しさを自然に引き出す流麗な旋律と、詩の感情に寄り添う繊細な表現によって、現在も多くの歌手に愛されています。

作詞家

フランチェスコ・チンミーノ

Francesco Cimmino(1862–1938)

イタリアの詩人・文学者。トスティはこの詩に曲をつけ、1905年に《L’ultima canzone》を発表しました。

歌詞・日本語対訳

M’han detto che domani,

聞いたよ、明日、

Nina, vi fate sposa,

ニーナ、君は花嫁になるのだって。

Ed io vi canto ancor la serenata!

それでも僕は、今夜も君にセレナータを歌う。

Là nei deserti piani

あの寂しい野原で、

Là, ne la valle ombrosa,

あの木陰の谷で、

Oh quante volte a voi l’ho ricantata!

ああ、何度君にこの歌を繰り返し歌ったことだろう!

Foglia di rosa,

薔薇の葉よ、

O fiore d’amaranto,

ああ、アマランサスの花よ、

Se ti fai sposa

たとえ君が花嫁になっても、

Io ti sto sempre accanto.

僕はいつまでも君のそばにいる。

Domani avrete intorno

明日、君のまわりには

Feste, sorrisi e fiori,

祝いの宴と、微笑みと、花々があふれ、

Nè penserete ai nostri vecchi amori.

僕たちの昔の恋など、もう思い出しもしないだろう。

Ma sempre notte e giorno,

けれど、夜も昼もいつまでも、

Piena di passione,

情熱に満ちた

Verrà gemendo a voi la mia canzone.

僕の歌は、嘆きながら君のもとへ届くだろう。

Foglia di menta,

ミントの葉よ、

O fiore di granato,

ああ、ざくろの花よ、

Nina, rammenta

ニーナ、思い出しておくれ、

I baci che t’ho dato!

僕が君に贈った口づけを!

Ah!… Ah!…

楽曲解説

「明日、ニーナが結婚するらしい」――。

それを知った男が、彼女に向けて歌う最後のセレナータです。

かつて何度も愛を歌った野原や谷。けれど明日になれば、彼女のまわりは結婚を祝う笑顔と花で満たされ、自分たちの昔の恋など忘れてしまうかもしれない。

それでも彼は歌います。

「ニーナ、僕が君に贈った口づけを思い出して」

明るく流麗なトスティらしい旋律の中にあるのは、叶わなかった恋への未練と、愛する人を手放さなければならない切なさ。

華やかなセレナータの姿を借りながら、胸の奥には別れの痛みが流れている――

甘美さと哀愁が美しく溶け合った、トスティを代表する歌曲のひとつです。

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